毎日の通勤に使用している自転車のVブレーキの音鳴りに困っていました。調整しても直らず、結局はブレーキシューを取り替える事で解消しました。ただ、Vブレーキを見ていると、ブレーキを効かせた時に撓みが生じており、強度不足であることが分かりました。Amazon Black Friday で前後の Vブレーキを購入し取り替えましたので、経緯と手順について書いておきます。
自転車のブレーキの音鳴り
私の使用している自転車については、以前にも記事にしていました。
この自転車を毎日の通勤に使用しています。雨の日も合羽を着て片道2km往復4km、年間1,000 km を通勤で走行しています。それに加えて、駐車場の問題もあるので近場の移動、特に駅周辺への移動には自転車を使う事が多いです。
そんなほぼ毎日使用している自転車ですが、ブレーキの音鳴りが気になっていました。昔ながらのハブブレーキならともかく、今の自転車のブレーキは Vブレーキです。購入当初から付いていたメーカー不明の Vブレーキとブレーキシューの組み合わせなのか、原因が分からない状態でストレスを感じていました。
そこで、どうすればブレーキの音鳴りが解消できるか調べてみる事にしました。
トーインの調整
ググってみると、Vブレーキの音鳴りにはトーインを付けるのが有効である事が分かりました。
ブレーキシューの入口側(自転車全体では後ろ側)の隙間を出口側(前側)よりも少しだけ広くすることで、音鳴りが防止できるそうです。
ブレーキの効き自体はブレーキシューとリムを平行にした方が良いのでしょうが、ブレーキや取付部分の剛性が低い場合には平行ではなくなり、部分的に面圧が上昇し、面積も狭くなるので接している部分がずれて振動を起こし音鳴りするのでしょう。
ブレーキをかけた時にブレーキが変形するのを見込んでトーインをつけると、ブレーキが効いている時にはブレーキシューとリムが平行になり、面圧が下がる事により振動が起こりにくくなるので、音鳴りがしにくくなると思います。
ですが、実際に紙を挟んで調整してみましたが、トーインを付けても幾らか良くなるだけで、根本的な解決にはなりませんでした。おそらく、トーインの量が少なかったのだと推測してます。
現在のVブレーキの問題
調整中に気付いたのですが、今のVブレーキはセンター合わせが非常にやりにくい事が分かりました。小さなネジでバネを押し込むタイプなので、一度合わせてもブレーキレバーを何度か握るとズレてしまいます。なので、ブレーキシューとタイヤリムの隙間を狭くする事ができず、ブレーキレバーの遊びが多めになっていました。
また、自転車が止まった状態でブレーキを強めにかけて前後に動かそうとすると、Vブレーキ上部が2~3mm動いていました。止まっている状態だけでなく、動いている状態でも同様に動いていると思いますので、Vブレーキあるいは取付部分の剛性が不足して、ブレーキが変形している事が分かりました。
結果 -> 音鳴り解消せず
残念ながら、ブレーキシューのトーインの調整では音鳴りは解消できませんでした。また、
- センター合わせが非常にやりにくい
- Vブレーキあるいは取付部分の剛性が不足している
という問題がある事が分かりました。
ブレーキシューの取替
問題の切り分けの為に、次の手段として今年2021年6月にブレーキシューを購入して交換してみました。
購入したブレーキシューは、シマノ ブレーキシューセット M70T4 です。
こちらを購入する際に、SHIMANO の Vブレーキシューについて少し調べましたので自分の備忘録としてまとめておきます。
ブレーキシューの種類
SHIMANO の Vブレーキのシューは、形式別で二種類が存在しています。
- カートリッジ型 ブレーキシューと取付用のカートリッジが別になっているタイプ
- 一体型 ブレーキシューにそのまま取付用のボルトが固定されているタイプ
M70 とか S70 の後に「C」の付いている型番がカートリッジ型で、「T」の付いている型番が一体型です。走行距離が長くシューの摩耗が早い場合には、カートリッジ型の方がランニングコストが安くなります。また、カートリッジを外さなくてもブレーキシューを取替できるので、ブレーキシューの調整が不要となり、メンテナンス性が向上します。
M70 や S70 は用途別で区別されています。SHIMANO のサイトにレーダーチャートで比較がされています。
マウンテンバイク ブレーキシュー | 保守部品 / アップグレードパーツ
特徴を一覧にした表を以下に示します。
S70C | S70C シビア |
M70R2 シビア |
M70CT4 シビア |
S70T | M70T4 | M70T3 | |
ドライ時の制動力 | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 4 | 2 |
ウェット時の制動力 | 2 | 2 | 2 | 3 | 2 | 3 | 5 |
静粛性 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 | 3 | 5 |
耐久性(泥状況) | 3 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 | 2 |
耐久性(ロード) | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 4 | 4 |
アンチフェード | 5 | 5 | 3 | 3 | 5 | 3 | 1 |
アンチリムアタック | 5 | 5 | 3 | 3 | 5 | 3 | 1 |
まとめると、
- S70C/T はドライ向き、ただしウェット性能が落ちる
- M70R2 はドライ特化、摩耗少なめ、ただしウェット性能が落ちる
- M70T4/CT4 は全天候型
- M70T3 はウェット特化、ただし摩耗しやすい、フェードしやすい(発熱してブレーキが効きにくくなる)、リムアタックしやすい(リムが摩耗しやすい)
- 各シビアは泥状況の耐久性が標準より良い。シュー単体ではシビアコンディション用しか売ってない模様。
という使い分けになると思います。価格を比較すると(それぞれ1セット2021年12月Amazon価格)
型番 | 価格 |
---|---|
S70C (カートリッジセット) | 1,327円 |
M70R2 (カートリッジセット) | 1,791円 |
M70CT4 (カートリッジセット) | 1,416円 |
S70C シビア用(シューのみ) | 682円 |
M70R2 シビア用(シューのみ) | 509円 |
M70CT4 シビア用(シューのみ) | 613円 |
S70T | 880円 |
M70T4 | 799円 |
M70T3 | 864円 |
ですので、M70R2 カートリッジセットが若干高めですが、ほぼ用途で選べばよいのではないでしょうか。
今回は、雨の日も自転車に乗る機会が多いので、全天候型の M70T4 を購入しました。使い勝手が良ければ、カートリッジ式にしようかと考えていました(後述しますが、Vブレーキにカートリッジ式のブレーキシューが付属していましたので、次からは此方を使用する予定です)。
結果 -> 音鳴り解消!
ブレーキシューに SHIMANO M70T4 を取り付けて位置を調整し、トーインを付けない状態で乗ってみた所、音鳴りは解消しました!雨の日に若干音はなるものの、以前のような周りに気を遣わせる程の音は出ません。止まる直前にキュキュッと鳴る程度ですので許容範囲です。
とりあえず、ブレーキの音鳴りは解消できたので、暫く使用してみる事にしました。
V ブレーキの取替
「現在のVブレーキの問題」の項で記載した通り、今のVブレーキには
- センター合わせが非常にやりにくい
- Vブレーキあるいは取付部分の剛性が不足している
という問題があります。ブレーキシューを取替して音鳴りは解消しましたが、できればこの2点も解消したいと思っていました。
購入しようとしていたのは DEORE BR-T610 です。
DEORE BR-T610 は Amazon で暫く欠品が続いていましたが、Black Friday に合わせたかのように在庫が復活しましたので、ようやく入手できました。(Black Friday が終了したら価格が下がっていました。残念)
目的は、
- ブレーキ自体の剛性アップによる撓み防止
- ブレーキセンター合わせのやり易さ
- ブレーキタッチの改善
です。撓みがなくなれば、ブレーキのタッチも握る強さとリニアに効いて、更にブレーキシューとリムの隙間を小さく維持できれば、握り始めて直ぐに効くようになると考えました。
開封、付属品
購入した箱の外観です。リア用となっていますが、フロント用も中身は同じです。
内容物は、Vブレーキ本体(左右)、カートリッジ式シュー1式、小袋に入ってワイヤーガイドチューブ、固定ボルト2個、蛇腹ブーツになります。
カートリッジ式シューは S70C だと思います(本体には記載がないので分かりませんでした)。
今回は小袋の中身とカートリッジ式シューは使用せず、Vブレーキ本体のみを取替しました。ブレーキシューは既存の M70T4 を使ってみて、摩耗が進んだら S70C に取り替えようと考えています。
取付
フロント、リア共に取り替えましたが、リアで取り付けた時の写真を載せておきます。
取替前のリアのVブレーキです。Vブレーキとリング錠がセットになっています。Vブレーキを固定するボルトでリング錠を取り付けるプレートを共締めする構造になっています。
手順としては、
- リング錠を取り外す
- ブレーキワイヤーをフックから取り外し、両方のVブレーキをフリー状態にする
- ブレーキワイヤー固定ボルトを緩め、ブレーキワイヤーを取り外す
- Vブレーキ固定ボルトを取り外し、リング錠固定プレートとVブレーキを取り外す
- 新しいVブレーキとリング錠固定プレートをボルトで固定する
- ブレーキシューを大まかな位置を合わせて仮止めする
- ブレーキケーブルを固定する
- ブレーキワイヤーの固定位置とブレーキシューの位置を微調整する
という流れになります。
Vブレーキを外した状態です。自転車側の取付座が段付きになっています。
Vブレーキ、リング錠固定プレートまで取り付けた状態の写真です。
取り外したVブレーキ(左側)と DEORE BR-T610 (右側)の比較です。下部の取付部分の厚み、上部の腕の部分の太さが全く異なります。SHIMANO DEORE BR-T610 は明らかに丈夫に出来ています。
フロント側も同様に取り替えました。手元にトルクレンチもありますので、規定の 8 Nm で締め込みました。
動作確認
気になる点はありましたが(後述)、前後とも取り替えて調整し、問題なく動作する事を確認しました。もちろん、音鳴りも発生しませんでした。
- ブレーキの撓みは全くありません。やはり既存のブレーキは剛性が低かったようです。
- ブレーキセンター合わせは非常にやり易くなりました。ネジで調整した後で、ブレーキを握っても殆どズレません。ブレーキシューとリムの隙間も少なく調整できるので、レバーの握り代も少なくする事ができました。
- ブレーキタッチは、握りの強さに比例した減速をするようになったと感じます。これまでは強く効いたり弱く効いたりバラバラの感触でしたが、握った強さ通りにブレーキが効いてくれるようになりました。
SHIMANO DEORE BR-T610 を取り付けて、概ね目的を達成できたと感じています。
問題点 取付部の隙間
取り付けた際に気になったのは、一番奥までVブレーキが入らずに隙間があいてしまう事です。
原因は、取付座の段付き部分が DEORE BR-T610 の嵌り込む部分よりも高い為です。以下に言及されている方へのリンクを貼っておきます。
これは誤差のうちかい?Vブレーキ交換。 - 川瀬水樹のカワセミ好き!
他にも、Amazon の DEORE BR-T610 のレビューにも同様の記事が多く書かれています。
そこで、自転車側の取付座、既存品の取付穴、DEORE BR-T610の取付穴の寸法をノギスで実測しました。簡単な図面を以下に示します。
取付座:
既存品の取付穴:
DEORE BR-T610 の取付穴:
比較すると、段が付いている所までの寸法が、取付座の方が 5.9 mm に対して、既存品は 5.5 mm、DEORE BR-T610 は 4.1 mmでした。今の取付方法では段付きの部分で固定されていますので、1.8 mm の隙間があいている事になります。段付き箇所の直径は、太い方が φ10.1、細い方がφ8 ですので、片側1.0 mm で受けるのは心許ない感じがします。出来れば、段付き部分ではなく奥まで密着した状態で固定させたい所です。
スペーサを入れて面で受けるようにしたいので、近いうちに幅の狭い平座金を購入して隙間を埋めておきたいと考えています。ピンに干渉しないようにするのであれば、内径φ10以上、外径φ14以下であれば大丈夫だと思います。M10 の平座金は内径φ10.5 x 外径φ18 で外径が大きすぎるので、下記の平座金を購入して試してみます。
Vブレーキの隙間に使用して丁度良かったとのレビューもありました。使ってみた結果はこの記事に追記しようと考えています。
結果
自転車の Vブレーキの音鳴りを解消しようと色々とやってみました。
- ブレーキシューを SHIMANO M70T4 に取り替える事によって、ブレーキの音鳴りは解消できました。
- それでもブレーキ本体の撓みがあったので、SHIMANO BR-T610 DEORE にフロント・リア共に取り替えました。
- 撓みは殆ど見られません。如何に前の無名 V ブレーキの強度が低かったか分かります。
- センター合わせがやり易く、ブレーキを握ってもズレません。なので、ブレーキとタイヤリムの隙間を狭くする事ができるので、ブレーキレバーの遊びを少なくすることができました。
結果、音鳴りも解消し、ブレーキタッチも良くなりました。毎日の通勤で乗っていてもブレーキに安定感がありますので快適に運転できます。今年の初めから少しずつ取り組んできた事が、年末になってやっと満足のいく結果が得られました。