Ryzen Master で遊んでみる (2) Eco Mode
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前回の記事では、Ryzen Master を install したが起動できず、その原因は Windows10 Pro の仮想化機能 (Hyper-V や Windows サンドボックス) を有効にしている為である事を記載した。AMD Ryzen の仮想化機能である SVM Mode が有効でも Ryzen Master は起動できた。
hiro20180901.hatenablog.com
同様に、Windows10 Pro の仮想化機能が有効な場合に VirtualBox も起動出来なかった。こちらは、Hyper-V と VirtualBox の共存の問題で、過去にも色々と調べていた。
hiro20180901.hatenablog.com
Ryzen 3800x に CPU を更新しても同じ現象が出ているが、これは後で詳しく調べてみる予定。
今回は、Ryzen Master で設定できる Eco Mode を設定してみた。こちらも、すんなりとはいかなかったので、その手順について記載した。なお、今回の現象は ASUS TUF GAMING X570-PLUS の UEFI BIOS と Ryzen Master の組み合わせで発生する特有の事象かもしれない。他の Motherboard で生じるかどうかは分からない。
Ryzen CPU の Eco Mode とは?
Ryzen CPU の処理能力を抑え、消費電力と発熱を抑制させる設定である。
www.amd.com
こちらのページの最下部付近に Ryzen Master の QRG (Quick Reference Guide) PDF があり(PDFへの直接リンク)、その37ページに説明が書かれている。
- Ryzen 3000 series CPU だけで設定できる。Motherboard のサポート必須。
- TDP 105W と 95W の CPU は TDP 65W に。
- TDP 65W の CPU は TDP 45W に。
- システム全体の電力バランスを取る(CPU 負荷を下げ Video の負荷を上げる)際に有効。(要するにゲームや機械学習に最適)
普段の使い方では、それほど CPU Power を使用しないので Eco Mode に設定して、必要な時だけ標準の状態に戻すような使い方が出来る模様。
Eco Mode の設定方法1
先程の QRG には、Ryzen Master を起動し、Home (表示のみ) 以外の Profile を選択すると、上部の Control Mode の箇所で Eco Mode が選択できると書かれている。Ryzen Master の User's Guide には Eco mode の記載はない。
しかし、手元で Ryzen Master を起動しても、どの Profile の Control Mode にも Eco Mode の選択肢が表示されなかった。
ググって見つけたのが以下のページである。
pcmanabu.com
Ryzen MasterでEco-Modeオプションが表示されない場合は、PBO(Precision Boost Overdrive)がBIOSでAutoになっている可能性があります。
PBO (Precision Boost Overdrive) とは?
Ryzen 2nd gen. の記事だが、此方が詳しい。
blog.livedoor.jp
自分の頭の中を整理しながらまとめてみる。
- Ryzen CPU は、PB (Precision Boost) と XFR (Extended Frequency Range) で能力上限が決められている。
- PB は CPU の動作周波数を調整する機能。PB は単コアと全コアの2種類で最大周波数を決めていて、 PB 2 はコア数によりリニアに最大周波数を調整している。
- XFR は CPU の温度に余裕があれば、上限の動作周波数を増やす機能。XFR より XFR 2 はギリギリを狙う。
- Ryzen 1st gen. では PB + XFR、Ryzen 2nd gen. と 3rd gen. では PB 2 + XFR 2 で上限の周波数が決められている。
- PB 2 + XFR 2 の組み合わせは内部で表を持っていて、その範囲内で動作する。
- Ryzen 2nd gen. 以降で使用できる PBO は、前記のテーブルの範囲を超えて、温度と3つのパラメータ(PPT、TDC、EDC)の上限を超えない範囲で自動で Overclock する機能
- PPT Limit : Package Power Target Limit [W]
- TDC Limit : Thermal Design Current Limit [A]
- EDC Limit : Electrical Design Current Limit [A]
これまでの Overclock は、供給電圧や電流、周波数、等の様々なパラメータを人間が調整しながら行っていた。低負荷状態でも消費電力が増加してしまうデメリットもある。
Ryzen の PBO では、固定1つ(温度) + パラメータ3つ(PPT、TDC、EDC) で Overclock が出来る。Overclock だけでなく、PPT を制限すれば能力を落とす (TDP を下げる、CPU 温度を下げる) 事が出来るのだろう。また、供給電圧や周波数を固定せずに(主に PPT で)上限を決めるので、CPU の負荷調整の機能が生きていて、低負荷時には消費電力が下がってくれる状態となる。
間違いがあるかもしれないが、このように理解した。
UEFI BIOS で PBO (Precision Boost Overdrive) 有効
ASUS の UEFI BIOS には、Precision Boost Overdrive の設定が2箇所存在している。
- Ai Tweaker 内
- AMD Overclocking 内
どちらも AUTO となっていた。
どちらを Enabled にすれば Eco Mode が現れるか分からないので、条件を変えて調べてみた。
Ai Tweaker内 | AMD Overclocking内 | Eco Mode Button | UEFI BIOS Eco Mode |
---|---|---|---|
Auto | Auto | × | × |
Auto | Enabled | × | × |
Enabled | Auto | 〇 | 〇 |
Enabled | Enabled | 〇 | 〇 |
同時に、UEFI BIOS の AMD Overclocking 内に Eco Mode が表示された。
とりあえず、Ai Tweaker 内と AMD Overclocking 内の両者の PBO を Enabled にしてみた。
Eco Mode の設定方法2
Ryzen Master に Eco Mode button が表示されるようになったので、Eco Mode に変更してみた。再起動して Ryzen Master が自動的に起動された画面が下記の通り。
Eco Mode | 起動直後 | |
---|---|---|
PPT Limit | 88 W | 395 W |
TDC Limit | 60 A | 255 A |
EDC Limit | 90 A | 255 A |
もう一度 UEFI BIOS を見ると、Eco Mode の制限値は AMD Overclocking 内に設定されている。
また、AMD Overclocking 内の Eco Mode も有効になっていた。
この状態で起動しても、Ryzen Master には反映されておらず、PPT は 395 W になっていた。
Eco Mode の設定方法3
混乱してきたが、恐らく複数の PBO の設定が有効になっているのが問題と考えた。
Ai Tweaker内 | AMD Overclocking内 | Eco Mode 有効 |
---|---|---|
Enabled | Advanced | × |
Auto | Advanced | 〇 |
その代わり、Ryzen Master から Eco Mode の Button は無くなった。また、Ryzen Master から PBO の設定を変更しようとすると再起動する必要があった。
Eco Mode の設定方法 (結論)
ASUS TUF GAMING X570-PLUS で Ryzen 3rd gen. の Eco Mode を有効にする為には、以下の手順が必要となる。
Ai Tweaker内 | AMD Overclocking内 |
---|---|
Enabled | Auto |
- 再起動して、Ryzen Master で Eco Mode に切り替える。又は、UEFI BIOS の AMD Overclocking 内に ECO Mode が表示されるので、そこから切り替える。
- Eco Mode の設定は AMD Overclocking の Precision Boost Overdrive に反映される。
- が、再起動しても Ryzen Master には反映されていない。
- 再び UEFI BIOS に入り、Precision Boost Overdrive を以下の通りに設定する。
Ai Tweaker内 | AMD Overclocking内 |
---|---|
Auto | Advanced |
- 再起動して、Ryzen Master の制限値が以下の通りとなれば Eco Mode で起動している。
- PPT Limit : 87 W
- TDC Limit : 60 A
- EDC Limit : 80 A
非常に分かりにくい手順だが、Eco Mode をどうしても使おうとすると、こうなってしまう。
結果
「Eco Mode と通常モードを簡単に切り替えられる」と考えていたが、(ASUS TUF GAMING X570-PLUS特有かもしれないが) 非常に面倒な手順となっている。
ここまでやってみて分かったのは、Eco Mode = PBO で能力を落とす様に制限を掛けた状態であり、別に無理に Eco Mode を使う必要はない。要は簡単に切り替えられる状態になれば使いやすくなる。試した結果が以下の条件となる。
Ai Tweaker内 PBO | AMD Overclocking内 PBO | AMD Overclocking内 PBO Limits | PPT Limit | TDC Limit | EDC Limit |
---|---|---|---|---|---|
Auto | Advanced | Manual | 142 | 95 | 140 |
こうしておけば、起動時は Ryzen 3800x の標準状態の Limit となり、起動後に Ryzen Master で PBO の値を変化させる事が出来るようになる。再起動も不要。
この状態で Ryzen Master で調整してみて、良い条件が見つかったら UEFI BIOS で標準値として設定する。
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amd-heroes.jp
こちらのキャンペーンで2種類のゲームを入手したが、Gears5 は nVidia GeForce GT1030 では起動時の判定で「能力不足」と言われてしまった。しょうがない。
そのうち機械学習をやってみて嵌りそうなら nVidia GeForce RTX2060 を最低ラインとして検討してみる。
2021年2月17日 追記 画像サイズを適正化
2021年2月18日 追記 はみ出していた表を修正