Ryzen 7 3800x Vcore offset (VDDCR CPU Offset Voltage)
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これまでの記事で、PPT Limit に着目して Ryzen Master から変更させる事により、CPU 温度や Clock の変化を確認した。その結果、現在の環境では Ryzen 7 3800x の定格の PPT Limit 142 W でも CPU 冷却は十分であり、特に制限を加える必要はない事が分かった。
ただし、OCCT や Prime95 を実行した際には、CPU 温度は 80 度を超える事から、もう少し温度を下げられないか調べてみた所、CPU の Vcore を下げる事により、性能をそれほど落とさずに負荷を下げられる事が分かった。
Vcore は Overclocking で上昇させるモノ、という固定観念があり、逆に下げる事で負荷を下げられるとは知らなかった。
そこで、Vcore をマイナス側に Offset させてみて、現在の環境でどの位の影響があるか調べてみた。
Vcore Offset の設定箇所
ASUS の UEFI BIOS では以下の場所に存在している。
Ai Tweaker -> DIGI+ VRM -> VDDCR CPU Voltage:
VDDCR CPU Voltage を Offset mode にすると、下の2つの設定が表示される。
- VDDCR CPU Offset Mode Sign はマイナス
- VDDCR CPU Offset Voltage を任意の値
に変更して起動すればOK。0.00625 V (6.25 mV) ずつ変化させる事が出来る。
Vcore Offset を変化させた結果
今回は、Cinebench R20 を実行させた場合の Clock に着目した。CineBench R20 を Multi で 5回実行、その後に Single で1回実行し、その間の PC の状態を HWiNFO で記録すると共に trend を確認した。Benchmark の結果を以下に示す。Average Effective Clock 以降は、負荷100%の状態の終了前40秒の平均値である。
Vcore Offset | [V] | 0.00000 | -0.02500 | -0.05000 | -0.06250 | -0.06875 | -0.07500 | -0.08750 | -0.10000 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Score (multi) | [pts] | 4960 | 5012 | 5003 | 4997 | 4948 | 4968 | 4948 | 4935 |
Score (single) | [pts] | 514 | 515 | 516 | 516 | 509 | 512 | 515 | 510 |
Average Effective Clock |
[MHz] | 4169 | 4182 | 4173 | 4164 | 4123 | 4133 | 4125 | 4126 |
CPU Die (average) |
[℃] | 73.9 | 72.3 | 68.8 | 67.9 | 71.7 | 70.1 | 70.5 | 68.4 |
CPU PPT | [W] | 123.7 | 120.4 | 114.3 | 112.9 | 110.8 | 109.8 | 109.3 | 107.4 |
CPU TDC | [A] | 76.7 | 75.2 | 71.5 | 70.9 | 70.2 | 69.5 | 69.9 | 68.7 |
CPU EDC | [A] | 112.6 | 113.0 | 112.9 | 112.6 | 111.6 | 111.7 | 111.6 | 112.3 |
Vcore Offset をマイナス方向に下げていくと、バラツキはあるものの概ね以下のような傾向があるように見える。
- Score(Multicore) は、Vcore Offset を -0.06 V より下げると落ち込みが大きくなった。同じ条件で Vcore Offset を 0 にすると、ほぼ元の Score に戻った。
- Effective Clock も同様に下がっていた。
- CPU 温度はよく分からない動きをしていた。この原因は室温の影響が大きいと思う。季節の変わり目で暖房入れたり入れなかったりで室温は18~23℃で変化していた。
- PPT 実際値は、直線的に減少していた。
Clock の挙動
Cinebench R20 を実行中に HWiNFO の情報を見ていて気付いた点があった。
赤枠は各 Core の Clock で、青枠は各 Thread の Effective Clock である。Effective Clock については以下。
www.hwinfo.com
Core Clock が上昇していても、CPU 温度等の様々な理由によって sleep されている時間を考慮した「実効Clock」が Effective Clock である。Ryzen Master に表示されている Clock は Average Effective Clock の値に近いとの事。
Vcore をマイナス側に Offset させると、私の所有する Ryzen 7 3800x では Core 4 の Effective Clock が下がる現象が発生した(上のキャプチャーは Vcore Offset -0.05 V の時の結果なので違いは無い)。そのような状態になっても Core Clock は下がっていなかった。
次のグラフは、各 thread の Effective Clock を全 thread 中の最大値で割った値を、thread 毎に比較したものである。
-0.075 Vより下げた場合に、明らかに Core 4 (T0、T1) の Effective Clock が他と比べて下がっている。この影響により、CPU 全体の Average Effective Clock が下がっていると思われる。
私の所有する Ryzen 7 3800x の Fastest Core は、Ryzen Master に依れば Core 2 (Core 0 ~ 7、Ryzen Master上では Core 3)だった。Core 2 と、Effective Clock の下がっていた Core 4 の Effective Clock を比較したのが次のグラフである。
Vcore Offset を -0.1 V まで下げると、Core 単体で 5% 程度、Average Effective Clock では 0.5 % 程度の Clock の低下が見られた。
以上の事から、Vcore Offset を下げていくと全 Core の Clock が下がるのではなく、特定のハズレ(?) Core の Effective Clock が下がり始めて、全体の Average Effective Clock が下がる事により処理能力が落ちていることが分かった。
負荷の大きさによる影響
Cinebench R20 であれば、Vcore Offset -0.06250 V までは影響が無さそうに見えたので、OCCT で高負荷を加えた場合にどうなるかを調べてみた。
- 0.06250 V では、Core 4 の Effective Clock が1.5%程度下がっていた。-0.05000 V でも若干下がっていたが、0.5%以下であり影響は殆ど無いと考えられる。
まとめ
Ryzen 7 3800x の Vcore offset をマイナス方向に調整した場合に、どのような影響が出るのか調べてみた。
- Vcore offset を -0.06 V より下げると、Cinebench R20 の Score が下がる傾向が見られた。その際に Average Effective Clock も下がっていた。
- 特定の Core (私の環境では Core 4) の Effective Clock が下がり、CPU 全体の Average Effective Clock を下げていた。
- OCCT の高負荷状態では、-0.06250 V でも同様の状態が見られた。-0.05000 V では Effective Clock の低下は 0.5%以下であり、影響は殆ど無いと考えられる。
この結果から、Vcore Offset を -0.05000 V (-50 mV) に設定して暫く運用してみる事とした。
EDC bug について
なお、Ryzen の EDC 設定を極端に低くして、Clock を上げる bug がある模様。
www.overclock.net
リンク先の記事では、Cinebench R20 の結果が Ryzen 7 3800x で 5200 以上になったと書かれているが、EDC Limit = 10 A、scalar 10x にして少し試してみた所、確かに Core Clock は上昇したが、Effective Clock は逆に下がる状態となり、Cinebench R20 の結果も下がった。CPU温度も下がり、PPT 実際値も下がっていた。
1usmus Ryzen Power Plan を入れる必要があるとか、UEFI BIOS の設定が合っていないとか、何か違いはあるのかも知れない。日本語の情報が少ないので、取り合えず深追いはしないで置く。
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- サイドパネルを開く方向が上部になった所は Define R6 と比べて良さそう。R6は後方を開くので、開けた瞬間に下に落としそうになる。
- オープンレイアウトの際のストレージ設置個所が増えている。R6 だと少なく感じる。
- ファンコントローラーの Nexus+ PWM Fan Hub が上部へ移動し、固定状態が良くなったように見える。
現在はストレージレイアウトだが、改めて Define R6 の Manual を読むとオープンレイアウトでも 3.5 in. HDD を 2基設置できる模様。5 in. Drive は使用頻度が少ないので取外し、外付ケースかコネクタ接続に変更して、ストレージレイアウトからオープンレイアウトに変更しようかと考えている。